ブスだけどヤレる。

そんな女に会った時、キミはどうするか?



この究極の問いに、どのような答えを出すだろう。


つい先日、答えに迫られた。



3月某日、都内某所。



 季節は春の装いを醸し出し、僅かだが空気に暖かみを感じるようになっていた。春は出会いの季節であり、そして、別れの季節でもある。私はこの日、送別会に出席していた。場所は銀座。これまでお世話になった人々を心からの感謝を込めて送り出していた。

「これまで、本当にお世話になりました。ありがとうございます。」

その気持ちに嘘、偽りはなかった。しかし、そのような思いが私の心を100%満たしていたかと言えば、そうではない。確かに、嘘、偽りなく心から感謝はしていたものの、その思いは私の心の10%も満たしてはいなかったのである。私の心の9割以上はその送別会後に行われる「合コン」に向けた気持ちの昂ぶりで埋め尽くされていたのであった。合コンの開催場所に近いから、という理由で送別会の場所を決めたのも私だった。今思えば何とも不遜な態度、送別会に向かう気持ちなど、ほぼほぼ持ち合わせてはいなかったのである。



 私は送別会を1次会でそそくさと抜け出した。そしてそのまま、合コンの会場へと歩を進めていた。合コンの開始は20時30分。しかし、時は既に20時45分を指していた。どうせ遅れるなら、ということで私はコンビニに立ち寄り、水を買った。そして飲み干した。酔いを少し醒まし、冷静を装った。恐らく合コンは、まだそこまで盛り上がってはいない。開始してわずか15分ほどしか経過していないからだ。そんな場に、酒で酔いつぶれ、ハイテンションの極みと化した私が現れたらどうなるだろう。女性側はおそらく「初対面なのに失礼な男だな」ときっと思ったはずだ。


それだけは回避しなければならなかったのである。私は水の力を借り落ち着きを取り戻し、合コンが開かれている銀座1丁目へと向かった。そして、会場に到着した。


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 合コンの会場は肉料理のお店だった。私の予想に反して、会場は既にかなり盛り上がっていた。私は水で少し酔いを醒ましたことを少しばかり後悔した。「これなら爆酔い状態でぶっ込んだ方がよかったな…」と。



 どうやら女性陣がかなり積極的らしい。この合コンは当初4対4で組まれていたものだが、私が到着した時点では女性は4人そろっていたものの、男は私の到着で3名だった。最終的にもう1人の男は午前0時近くになって現れた。もはや現れたこと自体が奇跡的ではあった。



 私が到着したとき既に女性陣を中心とし、会場は大いに盛り上がりを見せていた。



 女性Aは、今回の合コンの女性側の幹事であった。社会人とは思えないほどのパツキン。ものすごいパツキン。この会場の盛り上がりの源泉は間違いなくAだった。



 そして女性B。女性Bは、スタイルはまずまずだが、顔は私のタイプでは全くなかった。直接的な表現は避けたいが、恐らく私以外の世の男性にとっても、Bの顔がタイプだという人は少ないのではないだろうか、と推察される。



 そして女性C。彼女の職業は何とニート。つい先日、Cはそれまで勤めていた会社を辞めたとのこと。今はCの父親の財力に頼って生活しているらしい。私の一番嫌いなタイプである。しかし、破天荒なC。話はかなり面白い。そして顔も女性メンバーの中で最も可愛かった。普通に美人。



 最後に、女性D。Dは人事部で働く頭脳明晰な女性。盛り上がりを見せる会場において、唯一冷静な雰囲気を醸し出していた。そして顔は美人。先述のCの次点で可愛い顔立ちをしている。思わず「ハーフですか?」と聞いてしまうほどに、外国人のような顔立ちをしていた。俺にとっては4人の女性の中で一番タイプだった。





 合コンでは私は「関西弁」を前面に押し出す戦法で戦った。私たち愚かな男が、方言女子を大変好むように(ちなみに私は中国地方・山陰地方の方言を最も好む)、東京女子は方言男子を大いに好むのである。その大原則にのっとり、私はうざいぐらいの関西弁で攻め続けた。モチーフは服部平次。「せやかて、お前な、」「ほんま、えらいこっちゃで」「グラス割ってしもたわ。店員さん、堪忍な。」などという少々やり過ぎな感も出ていたが、執拗に関西弁で攻め続けたのである。そうこうしているうちに会は盛り上がり、あっという間に時間が過ぎ去った。そして1次会は終了し、一行は2次会へと向かうことに。時刻は午後10時半過ぎ。この時点でCが帰宅するというので全員で見送った。そして、残された男3人と女性A(パツキン幹事),B(Not カワイイ),D(ハーフ)の6人で近くのイタリアン・バーへと向かっていった。



 1次会の盛り上がりのままに、私たち6人は2次会でも大いに盛り上がった。そして、この時点で私は冷静に状況を見極めることに注力した。女性陣の誰が誰に対して好意を持っているか、についてである。そもそも合コンで2次会に行くという行為は、1次会で男性陣に対して少なからず行為を持つに至っていなければ起こりえない事象である。つまり、女性陣は男性陣の3人の中の誰かに好意を持っている、ということである。誰だ?誰が誰に好意を持っている?私はただでさえ細い一重瞼を、より一層ほそめ、女性陣の顔を訝しげに覗き込んだのである。



 女性BとD。彼女たちは明らかに私に好意を持っている。私はそう感じたのだ。私にやたら絡んでくるB(Not カワイイ)。そして、静かにこちらを見つめ、ミニスカートから少しエロい太ももを見せてくるD(ハーフ)。明らかに私に対して好意を持っている。それは明白だった。私は圧倒的にD派だったので、Dと仲良くしたかったのに、それを阻止するB。少々うざさを感じていたものの、全く相手にしないのは無礼であり、かつ「保険かけとくか…」という思いもあり、そこそこに応対した。そうすればするほどBは積極化し、徐々に手が付けられなくなってきた。ちょうどその時、店は閉店の時間を迎えた。時は0時を指していた。



 一行は帰るか、帰らないか(=終電を逃す)の2択に迫られていた。通常、気があったとしても、終電を逃してまで留まることは女性にとってはまずないこと。私自身、2次会でこの会は終了になる、と確信していた。が、事態は想像しえない状況へと向かっていた。Bの勢いが止まらないのである。



「まずい、このままでは全くタイプではないBにホテルに連れ込まれる…」



 危機感を抱いた私に気付いた女性側幹事A(パツキン)が俺に助け舟を出す。「カラオケ行こ。ほらBも黒澤くんも行くよ!」

 Aマジナイス。本当に助かった。いい子だ。どうやら私はこの場から逃げきれそうにはないので、カラオケに行くことにした。終電で帰るDとはここでお別れ。もちろん、人知れずLINEは交換した。後日、Dからご飯の誘いが来た。現在、日程調整中である。



 カラオケに移動したあとは、もう、まさに、「カオス」としか言いようのない状況だった。暗闇に乗じ、Bは私に接吻を求めてきた。私は、「眠い…」と言い訳をし、Bを払いのけた。そんな攻防が朝まで続いた。「もう5時前だ。電車動いてるね…」私はぼそりとそう呟き、荷物をまとめ、無事脱出することに成功した。



 彼女のいない私。ヤろうと思えばヤレる状況だった。しかし私は思いとどまった。己の理想を捨てることはできない。誇りを捨てることはできない。そして、そんな中途半端な気持ちで女性と向き合うことはできない。それが私の矜持であった。



 あれから数日が過ぎた。結局、B(Not カワイイ)とも連絡先を交換はしたのだが、連絡は全く来ていない。向こうもやはり、勢いだけだったということの証左であると私は受け止めている。やはり、一夜だけの関係、俗に言う「One Night Love」を相手も求めていたということだ。誠実な私は、その希望に応えてやる(ヤる)ことができなかった。私の器の広さもそれまで、ということである。



 ブスだけどヤれはする。そんな状況に巡りあったとしても、決して誇りを失ってはならない。自分の軸を失ってはならない。それは活きる指針ともいうべきものだからだ。舵を失った存在は自分だけでなく、他人も傷つけ、暴走することになる。それだけは避けなければならなかった。私はこれからも、自分の中のポリシーに忠実に生きていきたい。決して、その場の勢いだけで、事を構えるようなことはしない。その決意を新たにした夜だった。



以上