パブリックスタンドというナンパスポットがある。ここには夜な夜な若い男女が集い、飢えた眼差しでお互いに牽制しあっている。食うか、食われるか。そんな戦いが日夜繰り広げられている。



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私は普段、出会いを『ペアーズ』というインターネットマッチングアプリに依存している。もはや依存症ではないかと思うぐらい、毎日毎日使用している。『ペアーズ』では、出会いを待つ男女がそれぞれお互いにプロフィールを記載しあっている。金さえ払えば、メッセージのやり取りを開始することが出来る。

しかしパブリックスタンドは違う。金を払って得られるものは『酒を飲みまくれる権利』のみ。女の子と話すチャンスは自らが掴みに行かなければならないのだ。名前、趣味、職業、年齢。基本的な個人情報であればペアーズなら何の苦労もなく閲覧できるのに、この戦場はそんなに甘くはなかった。


ある日、私も含めた男3人が銀座コリドー街に集結した。1次会は焼肉だった。男3人、肉をむさぼった。『次は女だ。GETしよう。』ということになり、私たちは自然とパブリックスタンドのほうへと足を進めていった。




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店の前についた。テンションは高かった。


『最高の夜が始まる』


そんな予感しかなかった。昂っていた。荒ぶっていた。いよいよキックオフの時。私たちは無限に酒を飲めるチケットを購入し、店内へと進んでいった。

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余談だがパブリックスタンドのいいところは、あらかじめ料金上限が切られているところだ。合コンのようにアホのみたいに酒を注文して法外なコストがかかってしまうことはない。この点において、パブリックスタンドは非常に評価できる。

私たちはまず思い思いの酒を注文した。そして誓った。ベストを尽くすことを。正々堂々と戦うことを。この酒を、勝利の美酒に変えることを。

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戦闘開始だ。





VS 人間観察に来た女

戦闘開始直後に現れたのが『人間観察に来た女』だった。可愛くはない。しかし、私たち3人に話しかけられるような女はいなかった。すでに東京の歴戦の猛獣たちが、店内のほぼすべての女性たちに触手を伸ばしていた。いや、食らいついていた。可愛くない子しか空いていない。そんな状況だった。私たちに選択肢はなかった。しかしまぁ、アップにはなるだろうと思って少し話をした。


だめだ…、可愛くない。

早急にリリースした。




VS 二人組のお高い女

続いて、店内入り口付近で話していた二人組に話しかけた。が、会話が盛り上がらない。こちらは三人がかりで会話をしようとするも、女性たちにその気は一切ない。一方通行で会話を盛り上げることはできない。私のメンタルはやられてしまった。

ペアーズであれば、私は何人もの女性とメッセージのやり取りをしているし、実際に顔を合わせて話をしているわけではないので、たとえシカトされようがフェードアウトされようが心へのダメージは皆無である。しかし、パブリックスタンドは違う。生身の人間が向き合い、食うか食われるかのせめぎ合いをするのだ。そのダメージは私たちの心と体に直接的に作用することになる。私のメンタルは、遂にそれに耐えることはできなかった。












VS 医療関係者

私のメンタルはやられてしまった。一緒に来ていたもう一人の友人の肩を借りた。私はもう一人では歩けなくなっていた。私とその友人は遠目にもう一人の友人の様子を見守っていた。彼だけは違った。彼は場の空気に見事に溶け込み、圧倒的なコミュ力を武器に、そこそこカワイイ二人組の女性を捕まえていた。私も本来なら、その会話に参加したかった。本来ならば。

しかし前述の通り、私のメンタルはやられていた。もうボロボロだった。彼の会話に入っていくことはできなかった。

『店を出よう』

私は情けなかった。これまでの人生で、ここまでの屈辱感を感じたことはない。私は泣きたくなった。もう、ここへは帰ってこれない。この場所を見ると、トラウマがよみがえりそうだ。結局私はその程度の男だった。ただただ勘違い甚だしい大馬鹿野郎でしかなかった。無力感から、消えてなくなりたいとさえ思った。

もう私に生きる道は残されていなかった。ある一つの道を除いては。











私はおもむろにポケットからケータイを取り出すと、ペアーズを開いた。